皆さん、こんばんは。吉島良平(Ryohei Yoshijima)です。お元気ですか?今アメリカのニューオーリンズからこのBlogを更新しています。日本で桜が満開の時に出張になってしまい、損をした気分でこちらに旅立ったのですが、暖かい天候に恵まれ意外と得をしたのではないかと思いなおす4日間となりました。
さて、ニューオーリンズというと、どのようなイメージを持たれますか?ここはメキシコ湾にほど近く、フランス植民地時代と奴隷制度により、種々の文化が融合し、食事や音楽などが多様化し発展を遂げた街です。フレンチ・クウォーター地区には、いまだに植民地時代の建物が残っているので、どこか懐かしい雰囲気を醸し出しているんです。
宿泊しているホテルから徒歩5分圏にアウトレットがあったので、時差ボケの中、River Walk手前のスペイン広場にいくと、真夏のような強い日差しの中でJazzバンドの演奏が行われており、フランス語で話かけてくれる方も多く、寝れていない事も手伝ってか、かなりテンションが上がりました。それにしてもいい天気で、これがほんとに4月の前半なのか?と驚くほどでした。
え、今回は遊びですか?って、いえいえDynamicsな活動は当然待ってくれるはずがなく、ルイジアナ州のここニューオリンズで開催されているカンファレンス「Microsoft Envision 2016」(4月4日‐4月6日)に参加するためにここにきました。マイクロソフト主催のBuildやIgniteが新たな技術やテクノロジーで構成される開発者向けカンファレンス、Envisionはビジネストレンドや企業の課題にフォーカスされる経営層やビジネスリーダー向けカンファレンスという位置づけで今回が第一回目の開催となります。
会場となったErnest N. Morial Convention Centerには、北中米を中心に6000人(キーノートでの発表)を超える顧客やパートナーらが集まり、デジタル変革における経営層の役割や業界トレンドに関する200ほどのセッションを楽しみました。
まず最初にMicrosoft Chief Marketing OfficerであるChiris Capossela 氏より、「Leadership role in business Transformation(ビジネスの変革におけるリーダーの役割)」「Industory innovation, disruption and trends (業界の改革、崩壊、傾向」「Doing business with Microsoft (マイクロソフト製品を活用した経営)」という内容で3日間のセッションをお届けしますと口火が切られ、CEOのサティア・ナデラ氏のオープニングキーノートとなりました。
ナデラ氏は、近年ビジネスにおける働き方そのものが変わってきていることにふれ、マイクロソフトは地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにするため、ビジネスプロセスや生産性に革命を起こしていくことを、本イベントでも改めて宣言しました。
また、”Digital Transformation”(デジタル革命)というキーワードを多用し、ビジネスの変化に対応できず崩壊をしている企業も多く、どのようにすればデジタル革命を企業が取り入れられるか?について、顧客一人一人が持つデータを分析することでお客様個人との関わりを深める事ができたバージンアトランティック航空、戦略パートナーシップを締結したR3コンソーシアムやToyota Connected などの事例をもとに解説しました。
Digital Transformation
Digital Transformation
ビジネスリーダーへのキーメッセージとして、デジタルツールやインテリジェンスなシステムを活用しながらビジネスを変革させることで、顧客がかかえる課題に深くかかわる事ができ、社員の力も最大限引き出せ、オペレーションを効率よく最適化し、製品やサービスを変革させることができるのだと発信しました。
Scott Kelly
Scott Kelly
1年ほどにわたる国際宇宙船での任務を終えて帰任したばかりで、NASAの宇宙飛行士であるScott Kelly氏とのステージでは、最先端のIT技術をもつNASAがこの20年先に必要になるものをともに考えるという非常に興味深いセッション。HoloLensも宇宙船で利用しているようです。Scott Kelly
先週開催されたBuild 2016同様、Lilian Rincon氏がCortana Intelligence Suiteのデモンストレーションをしてくれました。*Cortanaと*ボットが連携も見物だった。Windows Phoneに向かって出張予定を話すと、SkypeにCortanaからメッセージが来て、スケジュールを確認。出張時にホテルのアカウントからスカイプ経由で連絡が来て部屋を選んで予約を完了させていく。また近くにいる友人を見つけ、待ち合わせ場所などを提案してくれる内容で、Cortanaとボットを連携させることで新たなコンピューターの使い方が提供できることを示した。ナデラ氏が提唱するCaaP「Conversation as a Platform」は近い将来いろいろなアプリケーションと連携して、サービスが展開できることを想像された方は多かったのではないだろうか。マイクロソフトはこれらのボット技術をプラットフォームとして提供し、開発者向けの環境を整備、多くの分野で普及させようとしてくるだろう。LineやSkypeなどのメッセージング環境とボットを組み合わせ、ユーザーと会話する独自環境を簡単に開発できるようになってくる。このスキームであれば、ユーザーがいつも使っているアプリの会話形式を生かしながら、欲しい機能を追加していける。これにより企業側はユーザーにアプローチするためのハードルが下がるはずと考えました。*コルタナ(Cortana)とはマイクロソフトがウィンドウズ10やAndroid・iphoneといったスマホ向けに音声の会話で応対するパーソナルエージェント機能のことです。*ボットとはロボットの略で、人間が操作していたことを、コンピューターが変わって自動的に処理するようにしたプログラムを指す言葉です。
Skype-Cortana
続いて、Natalie McCullough氏によるOrganization Analysis (組織分析)のデモンストレーションが行われました。マイクロソフトでは社員とのコミュニケーションをPower BIやYammerを活用して行っていることが説明されました。個々のコミュニケーションや個々の生産性をあげ、従業員の力を最大限発揮できると付け加えました。最後に、企業が会議に費やす時間&コストは膨大で、ワークスタイルに合わせた、よりいいコミュニケーションの方法を各企業はとる必要があることを強く訴求しました。
更に、Eric Boocock氏からオペレーションの最適化に関するデモンストレーションが行われました。Azure Machine Learning(Azureの機械学習)からリペアが必要なデータを確認し、Dynamics CRMのフィールドサービス機能とモバイル端末を活用し、最適且つ最短でオンサイトできるエンジニア(リソース)で訪問スケジュールを策定し、サービスオーダーの作業指示伝票を起票。訪問エンジニアはモバイル端末のスケジュール/端末から訪問先と地図を表示、サービス提供後にモバイル上の作業報告書にサインをもらって検収書をデータ化。最後は、Power BIを用い、システム導入効果をビジュアル化。確かにフィールドサービスのビジネスプロセスがある企業は往々にして作業報告書をデータ化するスピードが遅くこまっている場合が多いので本ソリューションは大変魅力的ですね。フィールドサービスをCRMでカバーするか、ERPでカバーするかは目的と企業規模によりそうですね。
AML+Power BI
CRM-Field Service
CRM-Mobile1
CRM-Mobile2
HoloLensの映像には、多くの経営者、ビジネスリーダーも見入っていましたね。
HoloLens1
最後にナデラCEOは、トヨタ自動車はデジタルテクノロジーを車内だけでなく、街のインフラや、それらのまわりのものと車がどのようにコミュニケーションがとれるかを常に創造している。例えば、安全な道路交通状況などを、車外へもサービス提供しようとしていると称賛し、是非このEnvisionでビジネスリーダーの皆さんが、自社にもってかえり取り組める内容を見つけてほしいとキーノートを締めくくりました。
続いて、マイクロソフトでビジネスデヴェロップメントを統括するペギー・ジョンソン執行副社長は、PayPalのダン・シェルマンCEOとのキーノートを行いました。FinTechの「老舗」といえるPayPalのシェルマン氏は、金融業界は、過去数十年経験した変化を遥かに超える変化がこの5年ほどでやってくる。気がついたときには手遅れになる可能性もある。より顧客が便利になるデジタル決済の変革に挑戦したいと述べた。
ペギー・ジョンソン執行副社長&PayPalのダン・シェルマンCEO
マイクロソフトは、世界のメジャー銀行で組織されるR3 consortiumにパートナとして参加し、10年以上も前の古いプロセスやオペレーションを変革させるため、時代にマッチした新たなブロックチェーンの技術を開発することを発表しました。40以上の金融機関にサービスを提供する「R3 Lab& Research Center」の優先クラウドプラットフォームには、マイクロソフトのパブリッククラウド「Microsoft Azure」が選定されました。ジョンソン氏はこの提携により、「長年使用されてきたプロセスの近代化や、運用効率UP、バックオフィスの運営コストを大幅に低減する可能性を秘めている」と述べました。分散仮想通貨システム「ビットコイン」で用いられた「ブロックチェーン」は、現代で利用されているソリューションと比較しても、取引をスピーディーにかつ安全で、コストパフォーマンスが高く、透明性の高い技術として、種々の業界での適用が期待されており、シェルマン氏も「ビットコイン」自体には興味がないとしつつも、ブロックチェーンには相当興味があると述べました。
MS CMO Chris Capossela
Microsoft’s Chief Marketing Officerである Chris Capossela氏は、Envisionは経営者やビジネスリーダーにとってクリティカルな課題を解決するためのグローバルサミットであり、だれもが事例をもとに考え、課題を解決するスマートな戦略を学べる貴重な機会である。新たな効率化や、ビジネスモデル、プロフィットモデルなどが典型例だと、翌日のBlogでリキャップしていました。
また、午後のセッションでは、Dynamics ERPのSMB(中堅中小企業)向けソリューション群のリリースプランの解説がありました。DynamicsのERPの背景や歴史をご存知ない方是非こちらをご覧ください。Dynamics ERP for SMB Market
Dynamics SL のリリースプラン
Dynamics SL
Dynamics GP のリリースプラン
Dynamics GP
Dynamics NAVのリリースプラン
Dynamics NAV
次の秋にリリースされる予定のNAV2017では、Office365からNAVで見積書や発注書が直接起票できるようになり、よりERPの敷居が下がってくるものと思われます。Dynamics NAVはSMB向けERPとしては史上最強製品だと感じています。
Dynamics NAV 1
Dynamics NAV 2
エンタープライズ向けERPであるDynamics AXに関しては、先日Tech Conferenceに参加した時のBlogをまだみていただけていない方は是非ご確認ください。 Dynamics AX for Enterprize Comapny 本イベントではOffice365との連携イメージを掴む事ができ有益な時間を過ごせました。Dynamics AXの新バージョンは日本市場でもポピュラーなERP製品となることは間違いありません。
最後に今回のベストデモンストレーションだったと感じたBusiness Analysis -Transform data into actionのSanjay Soni 氏のセッションについて記述しておきたいと思います。
このセッションは、Dynamics AX&CRM & Cortana & SQL R & Power BIを活用し、リテール業界がもっとも欲しがるデータ解析を活用具現化したもので日本でも展開しても魅力的で効果のあるものでした。
美しく設計されたSQL RやPower BIを用い、地図上の店舗の売上動向を確認。製品グループ別、店舗別などの売上は勿論のこと、特定の商材の接客時間までも確認しながら
店舗全体の稼働状況を把握。顔認証を用い、年齢層や性別を特定し、レジで推奨商品もご提案。更にはブルツースでレジPOSのキヨスク端末をつなぎ、お客様との会話をCortanaが拾い上げ、それをそのまま顧客満足度調査結果として活用するなど、リアルタイムアナリシスを含んだ非常に魅力的で見どころ満載のデモンストレーションでした。
Power BI
Powe BI / Cortana
キオスク端末で表情を撮影
キオスク端末/Cortana
個人的には、AXとCRMの実装設計方法とデータ抽出のロジックをもう少し深く知りたかったが、同じコンテンツに3回出るほど自分にとっては魅力的なセッションでした。
第1回目の経営者層向けのイベントとしては、コンテンツは充実していたと思いました。Dynamicsに特化していたイベントであるConvergence USは12000-14000人の参加者が常にありました。オープニングでは8000人がRegistration済み、またオープニングでも6000人という話があったが、実際は4000-5000くらいの参加者だったのではないだろうか?(Convergence EMEAと同レベル)と感じました。
ConvergenceとEnvisionを比較してもいいのかは微妙ですが、この劇的な参加者数の減少は何を意味しているのか?ということで、30名ほどのユーザーやパートナー、展示会場のブース責任者の方々に聞いてみた結果を下記に記述しておきます。
ユーザーからはアプリケーションを探しにきたのに、その色が過去より薄まっている。Dynamics製品の展示が少ない。(たしかに!)
User Groupのほうがより詳細な情報がとれるのでそちらに出向くと思う。(なるほど(´・ω・`))
パートナーからは戦略/メッセージが弱かったのではないかという声が多かった。パートナーの参加が少ないから、来年は見合わせるかも?(まぢで?)また、ConvergenceとEnvisionではターゲット層に結構な差があるのではないか?とも。(同感!)
展示ブースの方々からは、嘆きの声も聞こえ、来年は参加しないといっているISVも多かった。これはマーケティング担当は次回に向けて気合いを入れなおさないといけませんね。(いや、ほんまに!)
コンテンツ自体は、実はビジネスリーダーにとっては充実しており、サボらずに事前に調査して、しっかりと午後もセッションに出ると、過去のConvergenceと同レベルの情報が得られる。個人的には、経営層に会える貴重な機会となるため、来年度も参加してみようと思っていますが、Tech ConferenceやIgniteと合わせて参加しないと自分のスキルセットに必要な情報をすべて得るのは難しいかもしれないと感じました。
Business&Degital TransformationにはBig Dataが不可欠で、予測実績解析がいかに大切であること、またインテリジェントクラウドの活用、ビジネスの変化に合わせたプロセスの再構築、業務の効率化などに継続的にチャレンジする必要があることを再確認できたイベントになりました。
Make a difference in the world.
来年度は、ここで↓開催予定。イベント会場内にMicrosoft Shopが復活していますように。Storeしかなくて、SurfaceとかBandとかしか売っていなかった。これじゃどこにいってもDynamics Goodsが買えない(´・ω・`) ConvergenceUSにはあったのになぁ。
Envision2017