日本の皆様、こんにちは!吉島良平(Microsoft MVP for Business Solutions)です。
実は、土曜日からアメリカフロリダ州のオーランドに来ています。ここにはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、ユニバーサル・オーランド・リゾート、シーワールドなどのテーマパークがあります。また、ゴルフ場も100ヶ所以上あるようで、当然ながら豪華なリゾートホテルも多いです。郊外にはショッピングセンターやアウトレットモールが沢山あるので、毎年日本人も多く足を運んでいるようです。
パーティーではユニバーサルスタジオを貸し切ってのイベント、マイクロソフトらしい夜のネットワーキングが開催されました。
僕はミニオンズにDynamicsに追いかけれるというオチでw
一方で、フロリダ州は、ハリケーンも多く、そうですね、9月にここに来るのは、やめたほうがいいかもしれませんね。私が、ここに来る前にも大きな台風が来て、現在また2つの台風がこちらにやってくるらしいです。。。帰国できるかな。。。
さて、今回もDynamics特派員としてDirections NA(North America)http://www.directionsna.com/という北米のMicroosft Dynamics NAVのパートナーがボランティアで企画&運営を行うイベントに参加しています。本日9月17日から20日の計4日間で開催され、774名が北米を中心に集い、オープニング、ジェネラル、クロ―ジングの3つのキーノート、35の業種別セッション、12のハンズオン形式のワークショップ、133のセッションに参加しながら、新しい製品知識の習得や、マーケティング、ネットワーキングを楽しんでいます。自宅を出てから24時間かけてホテルについたので時差ぼけがつらいですが、どの国よりもはやく、日本の皆様に情報を共有すべく、Dynamics特派員の業務を全うしたいと思います!
さて、自分もDirectionsAsiaの運営組織のメンバーとして昨年度活動を経験させていただきました。それなりの規模のイベントを開催すると、本業をこなしながらの運営/企画/管理は本当に大変で、改めて、このようなイベントに参加できるのは、運営組織&ボランティアのサポート、そしてスポンサー企業あってのことだなと感謝しました。本当にありがとうございます。やってみてわかる、気づくことって沢山ありますね。
本日、初日のオープニングでは、この5年イベントを担当しているMCが
NAV→SL→GP→CRM→ISVのシャツを一枚一枚脱いで、D365に進化するという余興から始まり、会場を盛り上げました。毎年の事なのですが、彼はギターを弾いたり、Dynamics NAVの替え歌を会場に届けたりと、このイベントには欠かせない名物MCになってきています。
さて、前置きが長くなりそうなので、そろそろ、このあたりで初日のオープニングキーノートを振り返っていきたいと思います。恒例になってきたMarko Perisic氏のオープニングで下記のようにきりだしました。
昨年度は、Microsoftとして戦略的に「付加価値」をつけることをコミット、Dynamics365 for Financial を完成させ、Extensions、Appsource、Cortana Intelligence、PoweApps/Microsoft Flowをパートナーの皆様に活用してもらう事で、ビジネスを成功に導けるとお約束しました。
クラウドはビジネスを創出する機会ではもはやありません。必要であり現実となってきました。興味がないという企業は2014年から21%もさがり、92%の企業が興味を示し、80%のビジネスがクラウド上で行われる時代になってきました。
ここで皆さんに発表があります。Dynamics NAVは、上記のようなマーケットニーズを鑑み、Dynamics 365 Tenerife (テネリフ/スペインの島の名前で、実はこれは本バージョンのコードネームです)としてクラウド型と設置型の両方でご提供していくことになりました。*Tenerifeは一時的な名称であり、来年春には正式名称とともに製品リリース(GA)されます。→イベントでの大激論の結果を受けて、9月22日に下記の記事が掲載されました。https://community.dynamics.com/b/msftdynamicsblog/archive/2017/09/22/simplifying-dynamics-365-offeringsに記述があるように、Dynamics NAV 2018がリリースされることに方向転換するようです。
春にタイで開催したDirectionsAsiaでお話したように、Dynamics365 TenerifeはDynamics NAVの全機能をクラウド版にも継承します。合わせて、”個々のニーズに合わせてカスタマイズが可能です”と付け加えました。
Tenerifeは、Office365のBusiness Center、FlowやPowerAppsと連携できるようになりました。更に会計などのサービスもAppSourceを構築し、密に連携させることができるようになっています。Common Data Service を活用すると、安全かつ信頼性の高い方法でデータを保存し、得意先、連絡先、製品、および販売注文(受注)のような一般的なエンティティの観点からデータを扱うことができます。
以上のような前置きがあり、名コンビとなってきたJannik Bausager 氏とClaus Busk Anderson氏のデモンストレーションが始まりました。
まずはJannik氏から、NAVの非常にベーシックな機能への拡張について説明がありました。
ツールバーのSand Boxから該当するインスタンスへの切り替えがかなり容易になったこと。ロールセンターも拡張され、ウェブクライアントから再度サインインをせず他の画面ロールセンターへ切替できるように改良されています。カンパニーの切替も同様です。当然ながらウェブクライアントのユーザビリティーも向上しています。
また、連結会計処理もロールセンターから直接行えるようになっていました。おーっ、って思いました。
ロールセンターに各財務諸表をExcelに抽出するボタンが追加されました。
マスターデータや開始残高などの取り込みも改善されており、QuickBookなどからのデータ移行の補助ツール(Assist Setup)が充実しています。日本だと勘定奉行や弥生会計などからのマイグレーションツールもここで定義できそうです。設定画面(Assist Setup)を一か所に集めるモジュールが新たに作成されており、これは導入ベンダーにはありがたいなと感じました。
旧バージョンでは、転記(Posting)のタイミングで転記セットアップが不足しています。というエラーメッセージが出ていたのですが、これが転記前に画面に表示されるようになりました。
同様に、Vendor Invoice Numberの重複チェックも、転記前に警告として表示されるようになりました。
次に、一般仕訳帳(General Journal)の入力データをExcelにExportして、Excel上で編集。明細行を追加して、Microsoft Dynamics のExcel Add in機能を活用して、一般仕訳帳へのデータを更新。
勘定科目リスト、分析コードを用いたレポートの画面などに、必要に応じて分析項目(Dimensions)/分析コード(Dimension Values)で直接フィルターがかけられるようになりました。
続いて、中堅中小企業ではよくありますが、外部の会計士に業務の一部を外注しているケースへの対応として、Assist Setup(簡易設定)で外部からのアクセスを許可、設定可能となり、Accounting Hub という新たなコンセプトが発表されました。SMB(最近のマイクロソフト社内ではSMCというらしい)の場合、外部会計士分の1ユーザーが無償提供されるとのことでした。(日本でもはやくほしい)
中堅中小企業視点でモノづくりをしていることがよくわかる新機能と言えますね。
個人的に、これはいいな!と感じた新機能として、上記のAccounting Hub と連携してタスクをアサインし、締め切り日を定義できるようになりました。つまり外部の会計士は、外からアクセスし、Accouting Hubを確認するとTo-Doや遅延作業が見えるので、社内のユーザーに作業依頼を急いだり、必要なタスクを優先順位をつけて対応できます。また社内のユーザーも外部の会計士へ依頼している作業の進捗も見えるわけです。
これは、導入の段階から利用することで、導入パートナーと、ユーザー企業のタスクを見える化しながら、プロジェクトを効率的に進めるツールとして利用してもいいのではないかと感じました。
OCR連携もタイムリーに更新されたデータを設定画面側で即座に反映する事ができるようになっていることを確認しました。
そのほかにも、諸掛配賦の機能が拡張されるようです。これまでは、「金額」「同額」配賦が利用できましたが、「Net Weight」「Gross Weight」での配賦も可能になると説明がありました。(→残念ながらそれではあまり意味がないので、基本取引単位「Base Unit Measure」で配賦できるよう開発しなおすようにその場でお願いしました。)完成すれば喜ばれるお客様も多いと思います。
さてさて、ここで最近のマイクロソフトらしい新機能が、社員や仕入先/得意先の相手側担当者の写真をインポートすると、プロファイルをCognitive Serviceを活用し、性別や、年齢を予測しています。Marko氏は35歳と出て、Happyだったのではないでしょうかねw
ここからはClaus氏がデモンストレーションを担当しました。
これは旧クラッシッククライアントで持っていた機能の拡張版で、アプリケーションコンサルタントにとっては非常に便利な機能になります。ウェブクライアントでこれができるようになるとは、ある意味感動です。デモ映えもしますしね。
ここからはクラウドサービスについて、テナント別のハイパワースケール、アップグレードの観点から拡張性を、アップタイムやテレメトリーの観点から信用性について解説がありました。例)7秒で新たなテナントが構築できて、ユーザーは新しい環境でオペレーションを開始することができる。30秒でデータがアップデートされる。(どのくらいのデータかによるだろうが)
次は、Jasper Hedegaard Bojsen 氏による、Appsの構築方法についてのデモンストレーション
現在AppSourceのサイトでは、D365に関連するAppsがいくつか確認できます。
Dynamics365 Tenerife の中にAppsourceを取り込むと、そのAppsourceを開発したベンダーのサービスの提供を受ける事ができることをしっていますか?というメッセージが出てくるそうです。これはベンダーにとってもありがたいですね。
つまりは、AppSourceが”Build With”、”Go to Market With”、”Sale With ”というマイクロソフトの新しいパートナー戦略のキーフレーズに合致していると解釈しました。
Jesper氏は、あるAppsourceを利用して、発注金額が予算を超過していた場合、上長の承認を得るデモンストレーションをPower BIを交え実行しました。
右のBOXのデータが可視化されている部分をクリックすると、
Power BI でつくられたレポートが確認でき、
これをもとに発注金額の予算をあげるフローを承認起票、
また、ページから、Extensions(カスタマイズの外だしロジック)を定義し、
Visual Studio CodeでLoyalty Fieldを追加、クレジットリミットを20%増加させると30秒ほどで実装できるデモンストレーションが行われました。
また、タブレットクライアント、フォーンクライアントのUIをつくるのも簡単で、
利用可能なAPIについても解説しました。
最後に、Dynamics 365 Tenerifeは、どのようなツールでも、そして異なるプラットフォームでつくられたサービスでも、Appsouceを用いる事で、効率的に連携運用することができると締めくくりました。(パートナーは沢山Appsを開発してね、と聞こえましたw)
最後のデモンストレーション担当は、Chad Sogge 氏で、Microsoft Appsについていくつかのシナリオを用い解説しました。
Chad氏は、Accountant Hubから会計業務のBPOを担当している会社のリストから
更に、自分のタスクリストを表示、締め切りが過ぎているものを優先的に処理、
企業情報を確認し、
該当する遅延タスクを確認し、
試算表をExcelに抽出、
慣れたExcelで作業、
画面に埋め込まれたPower BIにて情報を確認、
勘定科目の照合画面から
支払い状況の照合を行います。
入金が遅延になっている取引の伝票を確認し、モバイル端末から、
入金遅延を確認、
Chad 氏からの入金が遅延していることを確認、
承認プロセスを経て、改めてインボイスを作成し送信します。
先のオペレーションから生成された情報は、Office365のBusiness Center Previewにて確認できます。
左のInvoicingボタンを押下すると、
それぞれをクリックすると、情報のトラッキングが可能です。
こちらからも請求書のフォーマットを確認することができます。
このように、一連の請求までの流れをDynamics365 Tenerife とInvoicing Appsを活用したモバイル端末でのオペレーションで実行、Office365と連携した証跡の管理はSMBマーケットにて相当なニーズがあると感じました。ただ、日本でこのようなニーズがあるか?ですね。
Office365のBusiness CenterのOnline Presence、Bookingなどは便利ですね。
次は、BookingのAppsとの連携シナリオを用いたデモンストレーションです。
パブリックなウェブサイトとの連携シーンを見てみましょう。
Facebookのサイトを経由して、ビジターがサービスの受付を行います。
ビジターがサービスを受けたい時間を選択します。
必要な入力を終えると、完了です。
Office365にて、スタッフのリストが確認できます。
Office365にて、サービスのリストが確認できます。
先ほど、Facebookで受けた修理・サービスの予約がカレンダーにて確認できます。
それでは、S&S Racingのロールセンターを見てみましょう。
未請求の予約データが確認できます。
メンテナンスの実作業が終わったら、請求データを作成します。こういう連携も面白いですね。
次のシナリオでは、お客様から下記のような引き合いのメールをいただきました。
このメールの本文を読み込んで、自動で見積もり(Quotation)を作り出しています。これはLUISで事前に学習をさせたのでしょうか?あとで、デモンストレーターに聞いてみます。
承認プロセスを回して作成した見積書がメールに添付されています。
請求書を送るようです。前払いのプロセスなのでしょうかね?
受注したのでしょうか、急ぎ送ってくださいというメールが来ています。このメールから
見積伝票を受注伝票に変遷させ、そこから承認、請求処理を実行します。
正式な請求書をメールに添付して送信!
ここからが少し新しいデモになっていました。
なんと、Outlookからカードで購入者が直接払うというビジネスプロセスです。
登録してあるクレジットカードが確認できます。
セキュリティーコードを入力して、支払いへ
これで支払いも完了です。見積、受注、請求、支払の一連のサイクルを全てOutlookとAppsourceで行っています。
これは便利で、デモ映えするなと思いながらも、日本は一括請求書だし、請求書を都度だすような輸出のビジネスは取引高が大きいのでクレジットカード決済はほぼない。このシナリオが利用できるのは、通信販売のプロセスくらいですね。でも通販も日本だと代引きでの支払いがあるので、返品/返金は欧米のように簡単にはいきませんね。ただ可能性は感じる事ができた面白いデモンストレーションでした。欧米などはこういう方向に動いていくのでしょうね。日本も一括請求書とかやめて、キャッシュマネージメントをもっとシンプルに変えていったほうがいいのではないでしょうか。
2日目のキーノートは、パートナーはこれからどんな学習を進めたらいいのかという事で下記のサイトの紹介から始まりました。
https://msdn.microsoft.com/en-us/dynamics-nav/developer/devenv-next-steps
Office365のパートナー、HRソリューションを展開するADP、D365 Financial and Operation を使っているユーザーや、導入したベンダーなどがステージに上がり、Marko氏とディスカッションを行いました。
エコシステムを連携させていく事が、SMBマーケットのシステム間連携の肝になってきそうです。初日のデモにもあるようにOffice365のAppsやCommon Data Serviceとの連携は面白いですね。またADPの欧米がもつ人事や給与計算などのソリューションとAppsourceが連携するのは非常に効率があがるし、日本のマーケットでも同様のものをつくっていく必要があるなと感じました。PartnerがAppsをサービス化する時代に突入といったところですね。
また、マーケットからのフィードバックとして、Enterprise Edition, Business Editionの区別は必要ないという声がおおいようで、今後は企業規模やシート数などの括りはなくなりそうです。
さて、ここからは、Dynamics365 for Salesのお話です。Danniel氏がステージにあがりました。
旧バージョンに比べて圧倒的にシンプルになりました。Sales Overview Dashboardや、ShrePoint連携も、より便利になってきた感があります。また、大きさを変更すると、タブレット、フォーンクライアントの画面サイズに自動調整されるのもなかなかいい。またTenerifeへの見積/受注伝票の連携は2重入力がいらないので更にいいですね。
続いて、Dynamics365 for Marketingは、Ghufran Iftikhar 氏により解説されました。
メールのテンプレートや、Word テンプレートの活用、マーケティングの効果測定・結果集計、リード作成からDynamics 365 for Salesへの連携など、非常に面白いですね。特にSMBはマーケティングの専門部隊がいない企業も結構あるので、システムに併せて業務を実行してもらうにはいいツールなのではないでしょうか?
Dynamics365 for Sales、Dynamics365 for Markeing、そしてDynamics365 for TnerifeのUXはかなり統一感が出てきました。ユーザーが必要なサービスだけを必要なときに利用できるようにというDynamics365のコンセプトに合致してきています。
さてさて、じゃいつリリースなの?となりますよね。下記のスケジュールが本日発表されました。
Dynamics365 Tenerife UX Role Centerが改良されました。
最後にMarko氏が、これまでのパートナーの皆様の取り組みに感謝します。Dynamics NAVはSMB企業向けのサービス、Dynamics365 Tenerifeとして進化をこれからも継続していきます。Dynamics365 for Sales, Dynamics365 for Marketing、AppsやCommon Data Serviceを活用して、エコシステムをお客様に提案していきましょうと括り、2日目のキーノートは幕を閉じました。
2日間のキーノートに参加してみて、Dynamics365シリーズのUX、アプリケーション連携のイメージは、だいたいクリアになってきました。一方で、Extension、Appsourceのどちらを用いて今後はモノづくり(開発/カスタマイズ)を実装していくべきなのか?明日からのハンズオンで実際にいろいろ学びながら自分なりの結論を出していきたいと思います。個人的には、Extensions2(カスタマイズのレイヤー管理手法)も未完成な状況なので、現段階では、Appsourceに関しては、PowerApps、Power BI、Microsoft Flowだけを活用し、NAV(Tenerife)側では手を入れないほうがいいように感じています。
下記は現段階の理想的なカスタマイズ/Appsの管理手法を表現したものです。
今回のイベントでは、Microsoft FlowやPowerAppsに関するセッションもありデータの可視化に関する議論も活発に行われました。
これらのセッションではほぼ新しいトピックはなく、昨年度から日本でしっかりと取り組んできたことで学びえる事はありませんでした。当方のほうがDynamics製品とのより具体的な連携シナリオ群をもっているので登壇者の代わりに教えてあげたかったです。
総じて、Azure Service Fabric やDevOpsなど、これまでのDynamicsで閉じたイベントではコンテンツにならなかった要素も織り込まれたイベントに代わってきました。他のイベント同様One Microsoft感が一層強くなってきましたね。(これはいい面も悪い面もあり、悪い面のほうがフィードバックとして多いので、DirectionsというイベントはNAV(Tenerife)になるべく特化して今後も開催できるよう私からもフィードバックしていきます。
来年は、サンディエゴにて、9月30日-10月3日で開催されることがクロージングキーノートで発表されました。
私が運営担当でもある来年の春に開催されるDirectionsAsiaでは、タイバンコクに集まってくださるAPAC(アジアパシフィック)のパートナーの皆様に、今回のDirections NA(北米/米国)と来月のDirections EMEA(欧州/スペイン)で学習した事をベースに、更に拡張した面白いデモンストレーションをお届けしたいと考えています。
日本の皆様にもセミナーなどで新しい情報を共有していくつもりですので、是非ご期待いただければと思います。