2024年12月24日 2025年01月15日 更新

ERPとCRMの違いを徹底解説!あなたのビジネスに最適なシステムは?

ERPとCRMの違いを徹底解説!あなたのビジネスに最適なシステムは?

業務効率化に役立つERPとCRM。どちらも企業経営に欠かせないシステムとして注目されていますが、両者の違いを明確に理解している人は、必ずしも多いとは言えません。似たような機能を備えているように見える両者ですが、実はその目的や対象とする範囲に大きな違いがあります。システム導入を検討する際、両者の違いを正しく理解し、自社の課題に最適なシステムを選ぶことが重要です。そこで、本記事ではERPとCRMの違いを具体的に解説し、両者を連携させるメリットについてもご紹介します。

ERPとCRMとは

まずは、ERPとCRMという言葉の定義を確認しましょう。
ERP(Enterprise Resource Planning)
ERPは、企業の経営資源を一元管理し、収集したデータを有効活用することで業務を効率化するシステムです。会計、人事、生産、在庫管理など、幅広い業務のデータを統合することで、経営判断の精度向上やコスト削減に貢献します。また、日本では、「統合基幹業務システム」「基幹業務システム(企業資源計画)」などと呼ばれています。
CRM(Customer Relationship Management)
顧客の情報を適切に管理し、分析することで顧客との良好な関係を構築し、維持するためのマーケティング手法やそれを実現するシステムです。顧客情報の一元管理、顧客分析、マーケティング活動の支援など、さまざまな機能を提供します。

なぜERPとCRMが必要なのか?

現代のビジネス環境は、ますます複雑化し、競争が激化しています。このような状況下で生き残るためには、業務の効率化と顧客満足度の向上という両輪を回すことが不可欠です。ERPとCRMは、この両方の課題を解決するための強力なツールなのです。

ERPとCRMの違い

ここからは、具体的な両者の違いを「目的の違い」「機能の違い」「対象範囲の違い」という3つの観点から解説していきます。

目的の違い

まず知っておくべきなのが、両者の目的の違いについてです。前述の通り、両者の目的は大きく異なります。 ERPは、企業全体の情報を集約し、一元管理することで業務の効率化やコスト削減を実現することを目的としたシステムです。適切な経営判断をするためには、多角的に情報を集める必要があります。人事や会計、財務などのデータを別々のシステムで管理していると、情報を収集するのにも苦労してしまいます。そこで、ERPという基幹業務全体を統括するシステムに情報を集約することで、スピーディーに分析を行うとともに業務を効率的に進めることができるのです。 一方、CRMが目的としているのは、顧客との良好な関係構築および関係の維持です。CRMでは、取引先の情報や顧客との問い合わせ内容、取引の履歴などを管理しています。これらの情報をもとに、 顧客とコミュニケーションを取って良好な関係を構築することで、顧客満足度を向上させるとともに、売上アップやLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上につなげることを目的としています。また、CRMの特徴の一つとして挙げられるのが、対象範囲が営業部門やマーケティング部門など、顧客との接点を持つ部門に限られるという点です。幅広い機能を備えたERPは部門を問わず企業内全体の業務をカバーしている一方、CRMは、顧客関係という一点に特化したシステムとなっているのです。

機能の違い

続いて、機能の違いについて確認していきましょう。
まず、ERPの主な機能としては、以下のような機能が挙げられます。

  • 会計管理: 売上、仕入、経費の管理、決算処理
  • 販売管理: 受注処理、売上管理、顧客への請求処理
  • 生産管理: 生産計画、生産実績の管理、在庫管理との連携
  • 人事管理: 従業員の入退社管理、給与計算、人事評価
  • その他: 購買管理、在庫管理、プロジェクト管理など
「統合基幹業務システム」とも呼ばれるERPの機能は多岐にわたり、製品によって機能の幅は大きく異なります。ここで紹介した機能をすべてのERPが備えているわけではなく、またここで挙げたのは、ERPの代表的な機能にすぎません。こうした幅広い分野の機能を一つのシステムに集約し、効率的に管理できるのがERPの特徴です。

一方、CRMの主な機能は以下の通りです。
  • 顧客情報管理: 顧客の基本情報、購入履歴、問い合わせ履歴の一元管理
  • 顧客分析: 顧客セグメント化、購買行動分析、LTV(顧客生涯価値)分析
  • マーケティング活動支援: メールマーケティング、キャンペーン管理、顧客満足度調査
  • 営業支援: 見込み顧客管理、商談管理、営業活動の可視化
このように、CRMには、顧客と良好な関係を構築するためにさまざまな機能が提供されています。顧客情報を管理するだけであればERPの機能でも対応できますが、顧客ごとのこれまでの取引の回数や頻度を分析したり、見込み顧客の情報を管理したりするなど、顧客との関係を細かく管理し、分析できるのがCRMの強みです。

ERPとCRMの比較表

ここまでの内容を踏まえ、両者の違いを以下の表にまとめました。

項目 ERP CRM
目的 業務の効率化、経営資源の最適化 顧客との関係構築、売上向上
対象 全社的な業務
※製品によって変わる
営業、マーケティング部門を中心に顧客との接点を持つ部門
主な機能 会計、人事、生産管理、在庫管理など 顧客情報管理、マーケティングオートメーション、顧客分析など
強み 情報の一元管理、経営分析、業務効率化 顧客理解の深化、顧客満足度向上、売上向上
弱み 導入コストが高い、システムのカスタマイズが複雑 導入効果を測る指標の設定が難しい
これまでの情報に加え、注意が必要なのはコストの面です。ERPもCRMも導入ある程度の初期費用とランニングコストがかかります。幅広い機能を備えているERPのほうがコストは高くなる傾向にあり、比較的機能が限定されているCRMはERPに比べると安価になっています。また、ERPは規模感の大きさから、導入にある程度の時間を要するということも理解しておきましょう。もう1点注意が必要なのが、導入後の効果についてです。従業員がシステムを使いこなすまでには、ある程度の時間がかかります。システム選びの際はこうした点を踏まえて目的に合ったものを選ぶようにしましょう。

ERPとCRMを連携するメリット

ここまで解説してきた通り、ERPとCRMは目的や機能も大きく異なるシステムです。そんな2つのシステムですが、両者を連携することで導入の効果をより高めることができます。ここからは、ERPとCRMを連携するメリットについてご紹介します。
データの一元化による管理の効率化
1点目は、データの一元管理による管理の効率化です。ERPとCRMをそれぞれ利用している場合、顧客情報などはCRMだけでなく、ERPでも管理することになります。2つのシステムを連携していなければ、データが重複してしまいます。同じ顧客データが2つのシステムにそれぞれ独立して存在していると、仮に顧客情報に更新が入った際、片方しか更新されず、整合性が取れなくなってしまうなどの問題が起こり得ます。ERPとCRMを連携させることで両方のシステムのデータが最新になり、常に正しい情報を確認できるようになるのです。
部門間での情報連携をリアルタイムで行える
2点目は、リアルタイムに情報を共有することができるという点です。ERPとCRMを連携していないと、ERPから受注に関する情報を確認することはできません。また、CRMから商品の在庫情報を確認することもできません。2つのシステムを連携すれば、こうした片方のシステムでしか管理していない情報を両方のシステムで確認できるようになります。これによって、生産部門の担当者が新たな受注情報をもとにスピーディーに必要な部品を用意したり、取引先の会社にいる営業担当者が必要な部品の在庫をその場で確認したりといったことが可能になります。また、営業担当者がERPで管理している生産計画をCRMから確認できるようにすれば、営業活動の際に生産計画を意識した提案ができるようになります。そうすれば納期の遅延も起こりにくくなり、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。情報連携がスムーズになれば、このような効果が期待できます。

ERPとCRMを選ぶ際のポイント

最後に、ERPとCRMを選ぶ際のポイントをご紹介します。
導入の目的をもとに選ぶ
システム選びにおいてまず重要なのが、導入の目的を明確にすることです。何のためにERPやCRMを導入するのか、現状どういう課題を抱えているのか、システムを導入することで何を実現したいのかをシステム選びの前に明確にしておく必要があります。システム導入には、一定のコストがかかります。導入の目的が不明瞭のままシステムを選び、導入を進めてしまうと、何のためにコストをかけたのかもわからず、システム導入による効果の測定もできません。近年ではERPやCRMの製品の数も多く、サービスごとに特長は異なります。システム導入による目的を明確にしたうえで、企業の規模や予算に合ったシステムを選ぶようにしましょう。
外部システムとの連携について事前に確認しておく
また、外部システムとの連携についても事前の確認が必要です。ERPやCRMは、外部のシステムと連携することで、より大きな効果を発揮します。ただ、すべてのシステムがスムーズに連携できるとは限りません。システムでの自動連携が難しい場合は、手動で連携を行う運用になる可能性もあります。手動での連携は手間がかかるうえ、人為的なミスのおそれもあります。システム選びの際は、連携を想定している外部システムと連携は可能か、具体的にどのように連携するのかを事前に確認するようにしましょう。
信頼できるベンダーを選ぶ
導入計画をスケジュール通りに進め、稼働後の安定運用を実現するためには、信頼できるベンダーを選ぶことも重要です。ベンダーによってサポートの体制はまちまちです。問題が発生した際にどのような体制で対応してくれるのか、サポートの対応時間や対応範囲はどうなっているのか、稼働後のサポート体制はどうなっているのかなど、導入に際して気になる点は事前にベンダーに確認しておきましょう。担当者とコミュニケーションを取り、本当に信頼できる相手なのか、見極めることが求められます。

まとめ

ERPは、企業内の情報を集約し、一元的に管理することで業務の効率化を図るためのシステムです。一方CRMは、顧客と良好な関係を構築し、維持することで売上アップや顧客満足度向上につなげることを目的としたシステムです。両者の違いを正しく理解し、適切に使い分けるようにしましょう。そしてシステム選びの際は、導入の目的を第一に考え、自社の規模や予算に合ったシステムを選ぶようにしましょう。
なお、Microsoftが提供するビジネスアプリケーション「Microsoft Dynamics 365」は、本記事で紹介したERPとCRMのさまざまな機能を備えています。ERPのモジュールとCRMのモジュールとの連携もスムーズで、組み合わせて使えばさらなる業務効率化が目指せます。この機会に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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